おっさん理系商社マンのブログ

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ピーターの法則または無能限界の法則って? ~大企業組織の病理~

 

ピーターの法則って聞いたことありますか?

「人は無能になるレベルまで昇進する」

というものなんですけど。どういうことかちょっと説明しますね。

 

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Aさんは某大手企業の営業主任です。バイタリティもあり、顧客の評判もよい。営業部でも若手のエースです。Aさんも35歳になり、課長に昇進することになりました。営業実績から言えば当然のことでしょう。4人の部下のマネジメントに最初はちょっと苦労しましたが、1年もすると軌道にのり、Aさんの課の売り上げは部内トップ。Aさんも充実した日々を過ごしています。40歳を過ぎるころ、常務に呼び出されたAさんは、「来期から部を任せたい」といわれました。順風満帆ですよね。Aさんは部長として晴れ晴れした気持ちで新年度を迎えました。しかしこれまでとちょっと違っていました。部員は50人、どうマネジメントしたらいいのかわかりません。自己流ではだめです。しかも役員からは今年度の予算と販売戦略はどうなっているか詰め寄られます。とはいえ日々は部下のトラブル対応や新任挨拶の会食で忙しくゆっくり考える間もない。日々をこなして3年たったころ、Aさんの部は全社で業績最低の部になり、、、

 

いかがですか?会社にお勤めのかたなら、見慣れた光景かもしれませんね。Aさんに実在の方を重ねて読んだ方もいたかもしれません。これがピーターの法則です。または無能限界の法則、とも言います。このようなできごとが社員全員の身に起きたらどうなるでしょうか。そう、みんな十分無能になるレベルまで出世して、それ以上は出世しないから、社内は職位に対して無能な人であふれかえる。もう少しリアルに言えば、無能な管理職であふれて、すべてのしわ寄せは現場の担当員にふりかかる。結果職場は疲弊し、組織は崩壊していく、、、というわけです。

 

ここまで読んで、どう思いますか?「あるあるだよなー」って思いませんか?私もそうでした。ずーっとそう思って、ことあるごとに、「それって無能限界の法則に陥ってるよね」とかしたり顔でしゃべっていた気がします。でもちょっと待ってください、どこかにまやかしがないでしょうか?あるいは隠れたメッセージがないでしょうか?

 

以下は私見ですがおつきあいください。

 

私がまやかしと感じるのは、少なくとも無能なレベルに到達するまで昇進するって、その会社わりと昇進の査定がしっかりしているよな。ということです。普通、「Aさんより、Bさんの方が仕事ができるのに、なんでAさんが先に昇進するんだよ。」「そりゃAさんは常務のお気に入りだからだよ。」なんてことがあったりしますよね。つまり、ピーターの法則のまやかし、というか違和感を感じたのは、無能化が進んだ組織でそのように合理的な昇進基準が維持されることはないのではないかということです。過度な抽象モデルで説明されすぎではないかな?と思うわけです。

 

ある会社に転職した友人が、「うちの会社の経営が安定を失わないのは、部長以上の昇進基準が厳格だからではないか」と言っていました。たまたま売り上げがトップだったというような実績は、例えば賞与のような形でリワードされるけど、部長以上の昇進はそうはいかない。というわけです。私はとても腹落ちしました。

 

もう1点は隠されたメッセージについてです。仮に不幸にも無能レベルに昇進したAさんはもうなすすべはないのでしょうか?もしくはプライドを捨てて降格を申し出るべきでしょうか?それもひとつの選択肢です。でも、Aさんには、「学習する」という最強の選択肢が残っています。そうは思いませんか?

 

ピーターの法則は、機能不全を起こした組織の病理を表現するメタファのひとつです。とても印象深いので、いろいろな気づきを与えてくれます。こういうメタファや、ことわざや、定説を聞いたとき、「へえ?」と感心して、したり顔で「それは、いわゆる〇〇の法則やな」とか断定するのではなく、「面白いけどそれってほんとか?」「別の視点もあるはずだよね」「てか、なんか活かせることないかな」という思考と実践の連鎖をつむげれば、そういう態度をいつも取れればよいなと思います。

 

最後までお読みいただき誠にありがとうございました。